第4章
 廃棄物・リサイクル対策などの物質循環に係る施策

 現代の大量生産、大量消費、大量廃棄型の社会経済活動から生ずる大気、水、土壌等への環境負荷は、自然の自浄能力を超えて増大しています。自然の物質循環を阻害することのないよう、私たちの社会経済システムにおいても、適正な資源投入、製造、流通・販売、消費、廃棄、再生製造といった物質循環の輪を形成していくことが求められています。
 第2次環境基本計画及び「循環型社会形成推進基本法」(平成12年法律第110号)にも示されているとおり、廃棄物・リサイクル対策は、第一に廃棄物等の発生抑制(リデュース)、第二に使用済製品、部品等の適正な再使用(リユース)、第三に回収されたものを原材料として適正に利用する再生利用(マテリアルリサイクル)、第四に熱回収(サーマルリサイクル)を行い、それでもやむを得ず循環利用が行われないものについては適正な処分を行うという優先順位を念頭に置くこととされています(ただし、環境負荷等の観点からこの順によらない場合もあります。)。国は、同法に定められた期限を半年前倒しして、平成15年3月14日に「循環型社会形成推進基本計画」を策定しました。本計画には、日本が目指す循環型社会の具体的イメージ、数値目標、国民、民間団体、事業者、地方公共団体、国が果たすべき役割等について定められており、計画に基づいて廃棄物・リサイクル対策を総合的かつ計画的に推進しています。

 第1節 廃棄物・リサイクルの現状

1 一般廃棄物の現況

 日本では、平成元年度以降毎年年間約5,000万tの一般廃棄物が排出されています。排出量は図4-1-1のとおりここ数年横ばいの傾向が続いていますが、13年度は、総排出量5,210万t(平成12年度5,236万t)、国民1人1日当たり1,124g(平成12年度1,132g)となっています。

ごみ総排出量と1人1日当たりのごみの排出量の推移

 一般廃棄物については、市町村が定める処理計画に沿って処理が行われていますが、市町村が行った中間処理のうち、直接焼却された割合は78.2%(平成12年度77.4%)となっており、焼却以外の中間処理(破砕・選別による資源化、高速堆肥化等)及び再生業者等に直接搬入される量の割合は16.5%(平成12年度16.7%)となっています。最終処分量は995万t で、前年に比べ56万t減少しました。

2 産業廃棄物の現況

 全国の産業廃棄物の総排出量については、ここ数年ほぼ横ばいですが、平成13年度は約4億tと前年度に比べ約1.4%減少しています(図4-1-2)。種類別では汚泥、動物のふん尿、がれき類が全体の約8割を占めており、また業種別にみると、電気・ガス・熱供給・水道業、農業、建設業がそれぞれ約20%を占めています。産業廃棄物処理業者の許可件数は年々増加しており、13年度末時点で19万3,314件です。

産業廃棄物排出量の推移

 処理状況については、最終処分量は約4,200万tで、前年度より減少しました。特に建設廃棄物については、最終処分量は平成7年度の4,100万tから12年度は1,280万t、14年度には700万t、再資源化等率は7年度の58%から12年度は85%、14年度には92%となるなどリサイクルが進んでいます。
 最終処分場の残余年数については、平成14年4月時点で全国平均4.3年で、一般廃棄物の最終処分場以上に厳しい状況にあります。

3 回収・再生利用の推進

 環境への負荷の低減のため、廃棄物の発生抑制、再使用、再生利用、再生資源の回収・利用を促進する必要があります。
 市町村による資源化と住民団体による集団回収を合わせたリサイクル率(再生利用のための回収率)は、平成13年度は15.0%(平成12年度14.3%)にとどまっており、年々上昇しているものの依然低いレベルにあります。

 第2節 廃棄物等の発生抑制

 廃棄物等の発生を抑制するため、事業者において、使い捨て製品の製造販売や過剰包装の自粛、製品の長寿命化や含有される有害物質の段階的な削減等を図る製品の開発・製造段階、流通段階での配慮が行われることを促進しました。また、廃棄物等の発生の少ない製品やリサイクル可能な製品、環境への負荷の少ない製品の優先的な購入を進めるため、国等の公的機関が率先してグリーン購入を推進するとともに、国民の生活様式の見直し、使い捨て製品の使用の自粛等を促進するための普及啓発を行いました。

 第3節 循環資源の適正な循環的な利用の推進

1 廃棄物の処理及び清掃に関する法律について

 平成9年に改正された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(昭和45年法律第137号。以下「廃棄物処理法」という。)に基づき、一定の廃棄物の再生利用について、その内容が生活環境の保全上支障がない等の一定の基準に適合していることを環境大臣が認定し、認定を受けた者については業及び施設設置の許可を不要とする規制緩和措置が講じられました。これまでに、自動車用廃タイヤのセメントの原材料利用及びコークス炉利用、シールド工法に伴う建設汚泥の高規格堤防の築造材としての利用、シリコンウエハ製造過程で生じるシリコン含有汚泥の転炉等において溶鋼を脱酸するための利用、廃プラスチック類の高炉還元剤としての利用、廃プラスチック類のコークス及び炭化水素油としての利用及び廃肉骨粉のセメント原材料利用が、この再生利用認定制度の対象となりました。15年度には、建設汚泥の再生利用1件、シリコン含有汚泥の再生利用1件、廃タイヤの再生利用8件及び廃肉骨粉の再生利用1件を認定しました。
 また、広域的に行うことによって廃棄物の減量その他その適正な処理の確保に資すると認められる廃棄物の処理については、環境大臣の指定を受けた者について業の許可を不要とする指定を講じてきました。平成15年度には、一般廃棄物では廃パーソナルコンピュータの自主回収及び再生利用を推進するため34件の指定を、産業廃棄物では43件の指定を行いました。これに代わるものとして、15年12月1日施行の改正廃棄物処理法において、廃棄物の広域的な処理を行う者として環境大臣の認定を受けた者について、廃棄物処理業の許可を不要とするとともに、処理基準の遵守、帳簿の記載及び保存の義務等の規制を適用する制度が設けられました。

2 資源の有効な利用の促進に関する法律について

 「資源の有効な利用の促進に関する法律」(平成3年法律第48号。以下「資源有効利用促進法」という。)に基づき、複写機の製造における再生部品の使用や自動車、オートバイ、パソコン、ぱちんこ遊技機等の3R(リデュース、リユース、リサイクル)配慮設計といった対策を推進するとともに、事業系パソコンと小形二次電池について、事業者による自主回収・リサイクルといった対策を講じました。また、平成15年10月からは家庭系パソコンについても、事業者による自主回収・リサイクルの制度が開始されました。

3 容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律について

 平成14年度に分別収集計画の2度目の見直しが行われ、15年度を初年度とする5か年計画が策定されており、この計画に基づき分別収集を実施する市町村の分別収集及び再商品化が円滑に図られるよう、情報提供等を行いました。また、市町村の分別収集、保管、選別等に係る費用の実態把握を中心とする調査を引き続き実施しました。さらに、飲料容器を対象にしたライフ・サイクル・アセスメント(LCA)調査を実施して、各容器の環境負荷低減への課題や改善策の方向性等を検討しました。
 また、特定事業者捕捉システムの活用等により、再商品化義務を履行しない事業者、いわゆるフリ−ライダー対策を引き続き行いました。

4 特定家庭用機器再商品化法について

 平成13年4月から施行された「家電リサイクル法」に基づき、15年度に全国の指定引取場所において引き取られた廃家電4品目は、1,046万台に達しています。
 また、資源の有効利用を一層推進するため、対象品目として家庭用の電気冷凍庫を追加するとともに、フロン対策の強化を図る観点から、電気冷蔵庫等の断熱材に含まれるフロン類の回収・破壊等の実施を義務付けました。

5 建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律について

 「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」(平成12年法律第104号。以下「建設リサイクル法」という。)の施行に当たっては、法施行一周年に当たる平成15年5月とリサイクル推進月間である10月に全国一斉パトロールを実施するなど、法の普及・啓発及び実効性の確保などに努めました。
 また、建設リサイクル法の円滑な施行を図るため、再資源化施設の稼働状況等を提供する「建設副産物情報交換システム」の全国運用を進めたほか、「建設副産物適正処理推進要綱」の周知・徹底及び「建設リサイクル推進計画2002」に則った建設リサイクルの推進を図りました。

6 食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律について

 「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(平成12年法律第116号。以下「食品リサイクル法」という。)に基づく食品関連事業者等の再生利用等の実施を確保するとともに、これらの円滑な取組を確保するため、登録再生利用事業者制度等の措置を活用した優良なリサイクル業者の育成等を推進しました。
 また、生産から消費までの各段階を通じた食品循環資源の再生利用等を推進するため、同法の普及啓発・民間の技術開発の支援・先進的な食品リサイクルシステムの構築等を実施しました。

7 使用済自動車の再資源化等に関する法律について

 「使用済自動車の再資源化等に関する法律」(平成14年法律第87号。以下「自動車リサイクル法」という。)の平成17年1月1日からの円滑な本格施行に向けて、関係団体等とともに実務体制の検討・整備を進めています。具体的には、15年6月にリサイクル料金の安全確実な管理運用等の機能を果たす指定法人を指定しました。また、8月には、中央環境審議会と産業構造審議会の合同審議会の審議内容を踏まえ、解体業者等の許可基準や再資源化基準を含む政省令の大部分について策定しました。

8 バイオマス・ニッポン総合戦略の推進

 地球温暖化の防止、循環型社会の形成、競争力のある新たな戦略的産業の育成、農林漁業、農山漁村の活性化の観点から、バイオマスをエネルギーや製品として総合的に最大限利活用し、持続的に発展可能な社会を早期に実現するため、平成14年12月に閣議決定された「バイオマス・ニッポン総合戦略」に基づき、この戦略に位置付けられた各種の施策を強力に推進しました。
 具体的には、全般的事項に関する戦略として、バイオマス関連の情報拠点の創設やシンポジウム等の開催を通じた国民的理解の醸成、バイオマスの効率的な利活用が可能となる社会システム設計に関する研究開発、地域における取組支援、関係府省の連携のためのバイオマス・ニッポン総合戦略推進会議、政府の取組の向上を図るための助言機関を設置し、総合戦略の推進を図るとともに、環境NPOの活動支援、モデル地域等における総合的なバイオマス利活用対策を実施しました。
 また、@バイオマスの生産、収集・輸送に関する戦略、Aバイオマスの変換に関する戦略、Bバイオマスの変換後の利用に関する戦略として、さまざまな施策を実施しました。

9 エネルギー等の使用の合理化及び資源の有効な利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法について

 最近の資源エネルギーの利用をめぐる社会経済的環境の変化にかんがみ、「エネルギー等の使用の合理化及び資源の有効な利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法」(平成5年法律第18号)が改正されました。具体的には、従来からの国内の省エネルギー対策、リサイクル対策、特定フロン対策に加え、海外で行われるエネルギー起源CO2の排出抑制事業や、リデュース、リユースの実施が支援対象事業に追加されました。

10 都市再生プロジェクトの推進

 平成13年6月14日の都市再生本部決定に基づいて、大都市圏におけるゴミゼロ型都市への再構築に向けた取組が開始されました。第1段階のプロジェクトとして、13年7月には、首都圏ゴミゼロ型都市推進協議会が設置され、14年4月には、7都県市による中長期計画の策定を行いました。この中長期計画では、国の基本方針より前倒しした廃棄物の減量化目標の設定、臨海部に立地する既存産業の集積や既存インフラの活用を踏まえた廃棄物処理・リサイクル施設の集中立地を行う拠点の形成、静脈物流システムの構築等を行うこととしています。また、15年7月には、中長期計画の進捗状況等を点検し、新たな課題の検討をするなど、フォローアップを行いました。
 さらに、平成14年7月には、首都圏に次ぐプロジェクトとして、京阪神圏ゴミゼロ型都市推進協議会が設置され、15年3月には、9府県市による中長期計画の策定を行いました。この中長期計画では、国の基本方針を上回る最終処分率の設定、大阪湾広域臨海環境整備センターを中核とした廃棄物・リサイクル施設の整備及び静脈物流システムの構築等を行うこととしています。

11 総合的な静脈物流システムの構築に向けた港湾における取組

 循環型社会の実現を図るため、広域的なリサイクル施設の立地に対応した静脈物流の拠点となる港湾を「総合静脈物流拠点港(リサイクルポート)」(全国18港)に指定し、官民連携の推進、港湾施設の整備など総合的な支援策を講じました。また、国内の静脈物流システムと連携を図りながら、循環資源の輸出ターミナル拠点化・大型化、品質管理の強化等による効率的な国際静脈物流システムの構築に向けた調査を実施しました。

12 ゼロ・エミッション構想の推進

 地域における資源循環型社会経済構築の実現に向けて、関係各省が連携して、ゼロ・エミッション構想推進のため「エコタウン事業」を実施しています。平成15年12月時点で全国19地域におけるエコタウンプランを承認し、それぞれの計画に基づくリサイクル関連施設整備事業等に対するハード面の支援、及び環境関連情報提供事業等に関するソフト面での支援を実施しました。

13 その他の取組について

 下水道事業で発生する汚泥については、緑農地利用や建設資材利用などによる汚泥の有効利用を推進しており、平成14年度には約60%(汚泥発生時乾燥重量ベース)の下水汚泥がリサイクルされています。また、16年3月にはバイオソリッド利活用基本計画(下水汚泥処理総合計画)策定マニュアルを取りまとめました。
 農業集落排水事業の実施においては、処理過程で発生する汚泥のコンポスト化、建設資材等によるリサイクルを推進するとともに、余剰汚泥の減容化について検討を行いました。
 また、リサイクルの一層の促進を図るため、リサイクルに関連する経済的手法のあり方についての検討がそれぞれ進められました。
 産業構造審議会において、廃棄物処理・リサイクルガイドラインの改定を行い、オートバイ、自動車用鉛蓄電池、ぱちんこ遊技機について新たなリサイクルシステムを構築することや、自動車製造業で平成10年度比で約9割減の最終処分量削減目標を新たに設定するなど、内容の充実・強化を図りました。

 第4節 廃棄物の適正な処理の推進

1 一般廃棄物対策

 廃棄物の発生抑制・循環的利用・適正処理の促進を図るため、平成15年度は、1,581億円の補助金等(産業廃棄物分を含む。)により、ごみ処理施設、汚泥再生処理センター、埋立処分地施設、リサイクルプラザ等の一般廃棄物処理施設の整備を図りました。
 その他、一般廃棄物処理施設に係る民間資金活用型社会資本整備事業に対して補助を行いました。さらに、都道府県において、ダイオキシン類対策、余熱の有効利用、公共工事のコスト縮減等の観点から策定された、ごみ処理の広域化計画に基づいた廃棄物処理施設の整備を推進しました。
 ごみ固形燃料を利用した発電施設の固形燃料保管設備において爆発事故が発生したこと等を踏まえ、ごみ固形燃料の安全な製造・利用を行うためのガイドラインを取りまとめ、その周知・徹底を図りました。

2 産業廃棄物対策

 不要な物である廃棄物の処理には、十分な費用をかけるという動機付けが働かないことが不法投棄などの産業廃棄物の不適正処理問題の根本的原因となっているため、数度にわたる廃棄物処理法の改正により、排出事業者責任を徹底し、優良業者が市場で優位に立ち、悪質業者が淘汰される構造への改革を推進しています。
 さらに平成15年の廃棄物処理法改正においても、廃棄物であることの疑いがある物に対する都道府県等の調査権限の拡充、未遂罪の創設など不法投棄等に係る罰則の強化、緊急時の国の調査権限の創設等の措置を講じました。
 また、PCB廃棄物の確実かつ適正な処理を推進するため拠点的な処理施設の立地について、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(平成13年法律第65号。以下「PCB特別措置法」という。)に定める「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」を策定するとともに、北九州市、愛知県豊田市、東京都、北海道及び大阪市において拠点的な処理施設の整備事業の具体化を進めています。
 全国の産業廃棄物の不法投棄の状況については、平成14年度の投棄件数は934件と5年ぶりに1,000件を割った一方、投棄量は約32万tと13年度を上回り、なお一層の取組が必要な状況にあります(図4-4-1)。
 平成15年8月に公表した「『環境立国』実現のための廃棄物・リサイクル対策」では、5年間で大規模事案(5,000tを超えるもの)を撲滅することを当面の目標として、産業廃棄物の不法投棄対策を進めています。
 不法投棄の早期発見・拡大防止のためには、監視体制の強化を図ることが重要であることから、都道府県等の監視体制強化等に対する経費を助成するとともに、IT機器等を活用した新たな監視手法の運用・開発を進めています。また、平成15年の廃棄物処理法の改正に伴い、全国9か所の地方環境対策調査官事務所の立入検査等の体制を強化しました。さらに、現場調査等に精通した専門家チームを、自治体が行う立入検査等の現場に派遣し、自治体職員のスキルアップを図る不法投棄事案対応支援事業も開始しました。一方、軽油の密造に伴い排出される硫酸ピッチの不適正処分については、関係機関との連携、情報の共有化を図りました。
 不法投棄等された産業廃棄物に起因する生活環境保全上の支障の除去等については、廃棄物処理法に基づき、産業界の自主的な拠出や国の補助金により造成した基金(産業廃棄物適正処理推進センターの基金)から、支障の除去等を行う都道府県等に対して財政支援を行っています。
不法投棄件数及び投棄量の推移

3 廃棄物処理法の改正

 平成15年の第156回国会では、不法投棄の未然防止のための規制の厳格化とリサイクル促進のための制度の合理化を内容とする廃棄物処理法の一部改正法が成立し、15年12月から施行されています。しかしながら、同法の成立後もRDF施設などにおける事故や硫酸ピッチの不法投棄が全国的に問題になるなど、廃棄物を巡る課題が依然として発生しています。それらの課題に対応するため、中央環境審議会での議論を踏まえ、国の役割の強化による不適正処理事案の解決、廃棄物処理施設を巡る問題の解決、硫酸ピッチ等の不適正処理の罰則や不法投棄等の罪を犯す目的で廃棄物の収集又は運搬をした者の罰則の創設等を内容とする「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律案」を第159回国会に提出しました。

4 産廃特措法の制定

 平成9年改正の廃棄物処理法に基づく産業廃棄物適正処理推進センターの基金制度が適用されない、10年6月以前に不適正処分された産業廃棄物によって生じる生活環境保全上の支障の除去等を計画的かつ着実に推進するため、15年6月に「特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法」(平成15年法律第98号。以下「産廃特措法」という。)が制定されました。この法律に基づき、国は、都道府県等が自らその支障の除去等の事業を行う場合、それに要する経費について国庫補助や地方債の特例等の財政支援を行います。
 日本で最大級の不法投棄事案である香川県豊島不法投棄事案及び青森・岩手県境不法投棄事案については、環境大臣の同意を得て、県が支障の除去等の事業を行うための実施計画を策定し、本格的に事業に着手しています。

5 広域処理場整備の推進

 全国的に最終処分場の確保が困難となってきている中で、近畿圏においては、「広域臨海環境整備センター法」(昭和56年法律第76号)に基づき大阪湾フェニックス計画が推進されており、神戸沖処分場などにおいて広域処理対象区域(近畿2府4県195市町村)から排出される廃棄物を受け入れています。

6 廃棄物の処理における環境配慮等

 港湾における廃棄物処理対策として、平成15年度は、32港1湾において廃棄物埋立護岸の整備に対する補助を実施しました。また、廃棄物海面処分場の延命化に資するプラスチックドレーン等による圧密沈下工事を熊本港で実施しました。さらに、資源のリサイクルの促進のため、首都圏の建設発生土を全国の港湾建設資源として広域的に有効活用するプロジェクト(いわゆるスーパーフェニックス)を6年度に開始し、15年度は石巻港、中部国際空港関連工事、広島港、呉粟津港において建設発生土の受入れを実施しました。

 第5節 有害廃棄物の越境移動の規制に関する国際的枠組みの下での取組と国際的枠組みづくり

 1970年代から80年代にかけて、先進諸国から輸出された有害廃棄物が開発途上国において不適切に処分されたり不法に投棄されることによって環境汚染が生じたほか、陸揚げを拒否され、有害廃棄物を積載した輸送船が行き先もなく海上を漂うなどの事件が多発しました。これらの事件の背景として、より規制が緩く処理費用もかからない開発途上国等へ有害廃棄物が輸出されがちなことが考えられ、こうして、有害廃棄物の越境移動問題は、先進国間だけでなく、開発途上国をも含んだ地球的規模での対応が必要な問題であるという認識が強まりました。
 こうした問題に対処するため、平成元年3月、UNEPを中心に、「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(以下「バーゼル条約」という。)が採択され、平成4年に発効しました。日本では、「特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律」(平成4年法律第108号。以下「バーゼル法」という。)が平成4年に制定され、平成5年にバーゼル条約に加盟しました。
 日本は、OECD加盟国間のリサイクルを目的とした廃棄物の国境を越える移動の手続を規定するものとして平成4年3月に採択されたOECDの「回収作業が行われる廃棄物の国境を越える移動の規制に関する理事会決定」にも参加しており、必要な規制が行われています。
 バーゼル条約の締約国は平成16年2月現在で158か国及びEUとなっており、おおむね2年ごとに開催される締約国会議において内容の充実、見直し等が進められています。
 平成7年の第3回バーゼル条約締約国会議において、OECD加盟国等から非OECD加盟国等への有害廃棄物の輸出を禁止すること等を内容とする条約改正案が採択されましたが、国際的な議論が継続して行われていることもあり、平成16年2月現在、発効には至っていません。
 平成10年の第4回締約国会議において、規制対象の範囲の明確化を図るため、同条約の規制対象及び規制対象外の廃棄物リストが新たな附属書として採択されました。これを受け日本においては、同年11月に、バーゼル法の規制対象物となる「特定有害廃棄物等」に規定するものを定めました(図4-5-1)。

有害廃棄物の種類

 さらに、平成11年の第5回締約国会議においては、有害廃棄物の越境移動及びその処分に伴って生じた損害についての賠償責任と補償の枠組みを定めた議定書が採択されましたが、この議定書についても、平成16年2月現在、発効には至っていません。
 平成14年の第6回締約国会議においては、有害廃棄物の国境を越える移動についての環境上適正な管理を実効的に実施するための戦略計画(2000年〜2010年)が採択され、また条約上の義務の実施及び遵守を促進する制度の設立等について合意に至りました。
 このほか廃棄物処理法において廃棄物の輸出の場合の環境大臣の確認、廃棄物の輸入の場合の環境大臣の許可等廃棄物の輸出入についても必要な規制が行われています。
 バーゼル法に基づいて輸出が承認された有害廃棄物等の量は、毎年数百トンから1万数千トンとばらつきがあり、平成15年の1年間では10,502トンとなっています。相手国は韓国、ベルギー、ドイツ、スイスであり、品目としては、鉛スクラップ、ハンダのくず等であり、主に金属回収を目的とするものでした。一方、バーゼル法に基づき輸入が承認された量は毎年数千トンから1万トン程度であり、15年の1年間では8,562トンとなっています。相手国はフィリピン、シンガポール、インドネシア、タイ、マレーシア、中国、韓国であり、品目としては、ガラスカレット(ブラウン管のくず)、銅スラッジ、銀スラッジ、電子部品スクラップ、含銅灰、廃バッテリー等であり、ガラスの再生利用や金属の回収など再生利用を目的とするものでした。
 また、バーゼル条約制定の趣旨やバーゼル法及び廃棄物処理法による規制内容等の周知を図り、有害廃棄物等の不法輸出入を防止するためのバーゼル法等説明会を全国各地で税関等の協力を得て開催するとともに、環境省・経済産業省において輸出入に関する事前相談を行っています。